「……おれ、俺が。瓏とペアだったから、あんな事になって。信乃に任せるって言われてたのに。俺が」
直ぐに慶賀くんが何を言いたいのかが分かった。
奉納祭のあの日、瓏くんとペアを組んでいたのは慶賀くんだった。瓏くんが暴走してしまったのは競技中に二人が離れ離れになってしまった後、慶賀くんが森の中で迷子になっている時だった。
あの時はぐれていなければこんなことにはならなかったのかもしれない、そう自分を責めているんだろう。
「まぁお前がボケッとしてなけりゃ、あんな事にはならなかったかもな」
「恵衣くん……!」
「紛れもない事実だろ」
確かに瓏くんと最後まで一緒にいたら、こんなことにはならなかったかもしれないし、もし何かが起きたとしても慶賀くんがそれに気付いて対処できたかもしれない。
だからって全部慶賀くんが悪いわけじゃないし、慶賀くんひとりが責任を感じることでもない。
それなのにそんな言い方しなくても。
「違う、俺が……あの時ッ」
「俺が、悪い。自分の力を、コントロール出来ない、俺が悪い」
慶賀くんの言葉を遮ったのは、以外にも瓏くんだった。慶賀くんを真正面からじっと見つめる。その視線から逃げるように顔を背けた。
「俺が、強くないのが、悪い」
「まぁ確かにそれもそうやな」
黙って聞いていた信乃くんが顎に手を当ててそう言った。
「力のコントロールは里におった頃からこいつの課題やった。さっさと身に付けな周りに迷惑がかかるって何遍も言うとんのに、未だに呪印に甘えてるんもこいつや」
信乃くんは握りこぶしをとんと瓏くんの頭に落とす。いて、と声を上げた瓏くんは少し恨めしそうな顔で睨んだ。



