「さぁさぁ皆さん、グラスは回りましたか?」
紙コップだけどな〜、とつっこみが入り病室内には笑い声が溢れる。
テーブルの上には持ち寄ったお菓子が所狭しと並べられている。今か今かと乾杯の音頭を待つみんなの横顔は笑みで溢れていた。
胸の前で紙コップを構えた。張り切る薫先生を見上げる。
「今回の一件は本当によくやったね。無茶したことはあまり褒められたものじゃないけど、君たちは大切な友達とその他大勢の生徒の命も救った。本当にありがとう」
「照れるじゃねぇ」とほほを赤くした泰紀くんに微笑む。
「そんな君たちを労うために、ささやかながらお菓子パーティーを開催します。心ゆくまで楽しんでください」
はーい、と皆の声が揃った。
早く早く、と乾杯の合図を待ちきれないみんなの紙コップが揺れる。
「それでは乾杯しましょう……とその前に」
ズコッと大袈裟に痩けた振りをした皆。
あはは、と薫先生が楽しげな声を上げた。
「焦らすなよ薫先生!」
「あはは、ごめんごめん。でも乾杯する前に、ひとつ片付けとかないといけない問題があるんだよ。ねぇ────慶賀?」
泰紀くんの隣で静かに座っていた慶賀くんがビクリと震えた。



