「あと一ヶ月は大人しくしとけって言われてんだろ馬鹿聖仁! 無茶するな!」
「だって瑞祥がどこか行こうとするから」
「それはお前が……あッ、あんな事! しかも皆の前で!」
「治るまでは何でもしてくれるって言ったじゃん」
言葉に詰まった瑞祥さんは唇をすぼめてぷるぷると震える。その顔をのぞきこんだ聖仁さんが「ここにいて」と首を傾げる。
しばらく真っ赤な顔で固まった瑞祥さんは、うなだれるように頷きベッドサイドにストンと腰を下ろした。
な、なんだろうこの甘々空間は。絶対何かあった、この二人絶対何かあった。だって二人の間に流れる空気が全然違う。
どうして他の皆はこの状況を見て「仲がいい」としか思わないの……? 男の子ってそういうものなんだろうか?
どこからどう見ても、なにか進展や変化があった態度だ。
見守るって決めたけど今すぐ色々聞き出したい。
我慢するんだ私、と必死に心を落ち着かせる。
「瑞祥は五、六時間目の授業なに? 今からここでパーティーするからサボりなよ。薫先生に呼び出されてたって後から言えばいいから」
「……えっと、それなら大丈夫。担任には腹痛と頭痛と歯痛と生理痛で一日休むって言ってあるし」
「あはは、ズル休みって訳ね」
その症状で本当に誤魔化せているのかは微妙だけれど、とにかく瑞祥さんもお菓子パーティーに参加できるらしい。
ようやくみんなが揃って前と変わらない賑やかさが戻ってきた。



