そこまではいい、問題は二人の体制だ。
すりおろしたリンゴが入った器とスプーンを持つ瑞祥さん、手に持つスプーンは聖仁にさんの口元に差し出されている。そして大人しく────というかむしろ嬉々として口を開けた聖仁さん。どこからどう見ても誰が見ても「あーん」の瞬間だ。
私たちを見て凍りついたように固まった瑞祥さんとは正反対に、「みんな久しぶり」と朗らかに笑った聖仁さんはお構いなしにスプーンをパクっとくわえる。
「えっと。元気そうでなに、よりッ……」
堪えきれなかったのか、いい切る前にブハッと吹き出した薫先生。
「お楽しみ中のところ悪いね」
「ホントですよ薫先生。もう少し気を遣ってください」
「昨日まで面会謝絶だった怪我人が、病室でイチャついてるとは思わないじゃん」
あはは、と笑いながら持ち込んだお菓子の袋をガサガサと広げ始める。他のみんなも「相変わらず仲良いなぁ」と笑って動き出した。
「わ……わた、私部屋戻るッ!」
耳まで真っ赤になった瑞祥さんがお皿とスプーンをテーブルに置いて勢いよく立ち上がった。今にも走り出しそうなその手を聖仁さんが掴む。
動かしたことで火傷の跡に響いたのか「いてて」と顔を顰めた。瑞祥さんは目を見開いて戻ってくると「動くな馬鹿!」と慌ててベッドに寝かせる。



