言祝ぎの子 伍 ー国立神役修詞高等学校ー



陶護(とうご)、お菓子パーティーしたいから部屋貸し切っていい? てか貸し切るわ」

「それ聞いた意味あります!? てか医務室に貸切システムなんてありませんからッ!」


皆入っていいよ、と薫先生が中へ招き入れる。鬼の形相を浮かべる陶護先生に「すみません」と小さく謝った。

意気揚々と先頭を歩く薫先生に連れてこられたのは神修の中にある医務室だった。

どうやら薫先生は医務室でお菓子パーティーをするつもりらしい。確かに教室みたいにほかの先生が見回りに来ることもないし、バレて怒られるリスクは低そうだけれど。

こっちこっちとどんどん奥に進み、病床のある扉に手をかけた。その奥は重い病気や怪我で入院している学生がいる。


「薫先生、そこって……」

「"全員参加"って言ったでしょ?」


ガチャリと病室の扉を開けた薫先生に続いてみんなも中へはいる。


「聖仁、調子はど────」


不自然に言葉を止めた薫先生。先生の背中の影から顔を出して、目の前の光景に「あ」と固まる。

中にいた二人も「あ」と声を上げて固まった。

ベッドの上にいたのは入院中の聖仁さんだ。部屋着の下から見える包帯の巻かれた体が痛々しい。でも体を起こして座れるくらいには回復したらしく少し安心した。

そのベッドサイドには瑞祥さんが座っていた。

昨日会った時に学校が始まる前に会いに行くと言っていたけれど、どうやらお昼休みも会いに来ていたらしい。