言祝ぎの子 伍 ー国立神役修詞高等学校ー


お前らはなんのために神修に来てるんだ、不機嫌な声でそう言った恵衣くんは呆れた顔でそっぽを向いた。

その頬にはまだ大きなガーゼが残っている。

みんな腕や顔には怪我の跡が残っていて、でも「一年の時に比べたらマシだよな」と逞しく笑っている。

確かにあの時は一学期の半分をベッドの上で過ごしたわけだし、比べたらかなりマシだろうけど。

笑って流せる皆の逞しさに結構感心した。


途切れた呪印が再び刻まれたことによって、私たちは瓏くんの暴走を止めることが出来た。

後になって分かったことだけれど、瓏くんを止めることを選んだ私たちの選択は間違っていなかったらしい。風に乗った怪し火が山の中腹で燃え広がって、先生たちは立ち往生していたのだとか。

お互いに肩を貸し合いながら満身創痍で下山すると、あまりにも酷い状態だったのかすぐさま医務室へ担ぎ込まれた。


いちばん酷かったのは聖仁さんだ。背中に酷い火傷を負って今も医務室の奥に入院している。昨日まで面会謝絶だったけれどやっと状態が落ち着いて、面会の許可がでた。

鬼市くんたちが帰ってしまう前に、放課後皆で会いに行く予定だ。


瓏くんが暴走してしまった原因は未だに分かっていない。当の本人もよく分かっていない様子で、恐らく模擬修祓の競技用に放たれた幽世生物のせいだろうという結論になった。