一番辛いはずの瑞祥さんがこうして自分の力で立ち上がった。立ち上がって、今度は私を立ち上がらせようとしている。
それなのに私はいつまで座り込んでいるんだ。立ち上がれば私にだって、まだ何かが出来るはずだ。
その手を掴んで弾みをつけて立ち上がった。
振り返ると瓏くんはまだ風神祝詞によって空高く持ち上げられている。上手く体が保てないのか怪し火も放たれていない。
瑞祥さんがみんなに向かって叫んだ。
「作戦再開! 落とせッ!」
皆の奏上がピタリと止まった。瓏くんの体はすぐさま地上に向かって落下を始める。
瓏くんの足が地面に着いたその瞬間、鬼市くんが再び瓏くんの前に飛び出す手筈だ。だったら私がするべきことは、鬼市くんのフォローだ。
上手く体勢を戻せなかったのか、瓏くんば枯葉の上に背中から落ちた。苦しげに咳き込みながらも体を起こす。九尾の怪し火がまたぶわりと膨らんだ。
鬼市くんが一直線に走り出す。それに気付いたのか怪し火を振りかぶった。
必死に火鎮祝詞を奏上する。
鬼市くんが瓏くんの目の前まで迫ったその瞬間、怪し火が放たれた。恵衣くんと嘉正くんが張った結界に当たって弾け、結界と共に霧散する。
再び怪し火を振りかざしたその瞬間。
「親友の存在忘れてんとちゃうぞッ!」
背後から飛び出した信乃くんが、瓏くんの背中に飛びかかった。体重に負けてそのまま倒れ込んだ瓏くんの背中に馬乗りになる。
皆は一目散に駆け出して手足に飛び乗った。



