「瑞祥、痛い……あんま揺らさないで……」
乾いた細い声だ。
「聖仁!? 聖仁!」
その声を聞いた瞬間安堵が弾けたのか、なんとか堪えていた物が溢れ出したみたいにボタボタと涙が溢れた。聖仁さんがその流れる涙を震える手で救った。
「泣かないでよ……俺がしたくて、したことだから」
「そういうのやめろっていつも言ってんだろ……!」
「止やない、よ。大切な人……守るためなら」
馬鹿野郎、と罵る声はあまりにも弱々しい。
「瑞祥……後のこと、皆のこと、頼む」
「お前それ死亡フラグにしたら絶対に許さないぞッ!」
「はは……やり残したこと山ほどあるから、まだ死なないよ」
気遣うように、でも十分に気持ちは伝わるくらいに聖仁さんをきつく抱きしめる。二人はこつんと額を合わせた。
「……終わったら説教だぞ」
「ふふ……望む、ところだ」
小さく笑った聖仁さんはゆっくり目を閉じる。気を失っし閉まったんだろう。
木の幹に持たれさせた瑞祥さんが目元を強く擦って勢いよく立ち上がった。
「何がなんでも成功させるぞ!」
立ち上がったその横顔に迷いはない。
瑞祥さんが私の元へ駆け寄った。へたり込む私に手を差し出して赤くなった目を細めて笑った。



