「瑞祥さん……ッ!」


半透明の結界の中で私の声が響いた。炎は結界が弾いた。私は結界に守られたまま、つまり瑞祥さんはこの炎に晒されているということだ。


「そんな、いや、瑞祥さん……瑞祥さんッ!」


ピクリとも動かない瑞祥さんの姿が何度も何度も脳裏を過ぎる。それを振り払うように強く首を振った。

なんで、どうして。

私なら助けられるはずだった。間に合うはずだった。手が届くはずだった。

膝からその場に崩れ落ちる。焦げた地面にその衝撃でボタボタと涙が落ちた。かわいた土をきつく握りしめる。

未来を変えるための力なのに。皆を救うための力なのに。大切な人を守るための力なのに。

瑞祥さんは私を守ってくれたのに。


食いしばった歯の間から嗚咽が漏れた。


轟音が止んで炎の勢いが弱まった。誰かが鎮火祝詞を奏上する声が聞こえる。

袖で目元を強く擦って顔を上げる。上げた瞬間目が合った。正確には目が合ったのではなく、驚いた顔で宙を凝視する瑞祥さんの視線と絡んだ。

瑞祥さんは尻もちをついてその場に座り込んでいた。怪我はない、火傷もだ。傷一つない。

瑞祥さんのまわりには私と同じ、半透明の膜が張られている。

守りの結界だ。



「瑞祥さ────」

「聖仁さんッ!」


私が名前を呼ぶのとほぼ同時に、悲鳴のような声が響く。