次の瞬間、瓏くんの尾っぽの先の怪し火がぶわりと膨らんだのが見えた。

先見の明で見た光景が脳裏を過る。

自我を失った瓏くん、膨らんだ怪し火、次に起きたのは────瓏くんの暴走だ。


「皆隠れて……!」


叫ぶと同時に振り返った。驚いた顔をした瑞祥さんと目が合う。


「あかん暴走するッ!」


切羽詰まった声と共に、炎が膨らむ音が頭上から聞こえる。

瑞祥さんに向かって一歩踏み出した。

全てがコマ送りのようにゆっくりと見えた。自分の心臓の音がやけに大きくて、周りの音が鮮明に耳に入ってくる。

「どうした巫寿!?」と瑞祥さんが手を差し出して、私の体が傾いていることに気付いた。足元を見下ろすと木の根っこにつま先が引っかかっている。

徐々に体が傾く。地面が迫ってくる。炎の音はうるさいほどに大きい。


駄目だ駄目だ駄目だ、このままじゃ瑞祥さんを守れない。未来を見たはずなのに、未来を変えるために今ここにいるはずなのに。

転んでる場合じゃない、足を出せ手を出せ。瑞祥さんを守らなきゃ。何としても守らなきゃ。


瑞祥さんに向かって手を差し出したその瞬間、青い炎が辺り一面に広がった。