舞い始めたと同時に、私の周りに半透明の膜がかかった。背後で瑞祥さんが絶えず祝詞奏上する声が聞こえる。


「瑞祥そっち行ったッ!」


聖仁さんの焦った声に思わずハッと顔を上げる。放たれた怪し火がこちらへ向かって降ってくる。


「わーってるよ!」


ひひ、と得意げに笑った瑞祥さんの声がして怪し火は半透明の膜に当たった。

バケツの水を地面に勢いよく巻いた時のように細かい火の粉がぼわりと広がり僅かに熱を感じる。


「どうだ見たか聖仁、凄いだろ!」

「後でいっぱい褒めてやるから、今は役割に集中しなさい!」

「ったく、少しは褒めろよ!  巫寿、今の見ただろ? 私を信じろ、絶対に守ってやる!」


振り向けば瑞祥さんはグッと親指を立てて笑った。白衣は火の粉が降りかかったのか所々に焦げがあって、頬も煤けている。

私を守るということは、瑞祥さん自身の体は危険に晒されるということだ。瑞祥さんはそれを承知で引き受けてくれた。

それだけ私が重要な役割を担っているということだ。


「……よろしくお願いしますッ!」


両頬を叩いて自分に喝を入れる。

瑞祥さんを、皆を信じて私の役目を全うするんだ。