二人の体がぐらりと傾いた。重力に逆らえず二人は真っ逆さまに落ちる。

ずしゃ、と音を立てて落ちたのは来光くんだけだった。宙で体制を整えた瓏くんは綺麗に二本足で着地する。

瓏くんの周りを火の玉が飛んだ。息を飲んだその時。


「おい信乃、後で文句言わないでくれよ」


木陰に隠れていた鬼市くんが瓏くんの背後に飛び出した。妖力で引っこ抜いた太い木を肩に担いでいる。


「構わん許す! やれッ!」

「ん」


バッドを素振りするかの如く軽々と振りかぶった大木がブォンと音を立てて風を切った。振り切ったそれは野球ボールを打ち抜くように瓏くんの腰にヒットする。

体はくの字に曲がって木の幹に乗っかかった。そのまま空高く舞い上がる。


「手筈通り、風神祝詞!」


恵衣くんの指示が響きわたり、みんなの柏手が揃った。


来光くんが用意した守り札を付けた三人が飛び出し、瓏くんを木から引きずり下ろす。そして木から降りた瓏くんを、鬼市くんが天高くほうり上げる。問題なく宙に浮いたら、今度は下へ落ちてこないように私と瑞祥さん以外の全員で風神祝詞の奏上。

ここまで綻びひとつなく全て作戦通りに進んでいる。


「絶対に落としちゃダメだよ! 瓏を鼓舞の明の範囲外にキープするんだ!」


おう!と皆が応える。


「今だ巫寿、始めろ! 瑞祥さん頼みます!」


恵衣くんが振り返って私を見た。大きく頷き手を差し出す。天高く両手を差し出す動作は鼓舞の明の最初の型。

次は私の番だ。