第一陣は泰紀くん、慶賀くん、来光くんの三人が真正面から瓏くん目掛けて突撃する。
勢いよく土を蹴った三人が飛び出した。
「二人とも日和るなよッ!?」
「来光にだけは言われたくねぇ!」
青い顔をして笑った泰紀くんが自分を鼓舞するようにそう叫んだ。
瓏くんが走り出した三人に気が付いた。三本の尾っぽを打ち付けるように勢いよく振りつける。大きな火の玉はゴォォと音を立てて三人目掛けて宙を横切った。
火の玉は三人の目の前まで迫っていく。皆は走り続けた。祈るように指を組む。
「安心して! "一発目は絶対に当たらない"からッ!」
来光くんがそう叫ぶと同時に、三人を囲うように卵色をしたドーム型の膜が光る。火の玉が膜に触れた瞬間、激しい火花が音を立てて散った。
三人の背中に張り付いていた御札が微かに光り役目を終えてはらりと落ちる。来光くんが用意した御札だ。
驚いた瓏くんが僅かに目を瞠る。
「来光! 背骨は踏むなよ、踏むなら腰骨にしろ!」
瓏くんが立つクスノキの下で、泰紀くんたちが膝に手を着いて背中を丸める。数歩遅れて走っていた来光くんが二人の背中を踏み台にして飛んだ。
ふわりと宙を舞った来光くんが「うわぁッ!」と叫ぶ。
「ていうか何で僕選んだんですかッ! 運動音痴なのにぃッ!」
嘆きと共に手を伸ばす。その手は瓏くんの足首を掴んだ。
「そのまま引きずり下ろせ、来光ッ!」