作戦開始の合図は最後の一人が火鎮祝詞を奏上し終わったその瞬間だ。

一足先に奏上を終えた私と瑞祥さんは木の裏に身を潜めてその時を待つ。皆を指揮する聖仁さんの背中を後ろから眺めた。


「緊張してるのか? 巫寿」


いつの間にかがちがちに強ばっていた両肩に手が乗せられた。


「……はい。すごく」


にかっと笑った瑞祥さんが私の頭をわしゃわしゃと撫でる。


「大丈夫だ、巫寿の事は死んでも私が守る!」

「縁起でもないこと言わないでください……!」

「アハハッ悪い悪い! でも聖仁が考えた作戦なんだぞ、成功間違いなしだ!」


胸を張ってそう言いきった瑞祥さんに、私は曖昧に頷いた。


「おっと、もうそろそろだな」


最後の一人は泰紀くんだった。火鎮祝詞の最後の一節を奏上し始める。

これが終われば作戦開始、まずは泰紀くんたち三人が瓏くんに向かって飛び出す手筈だ。

悪いことをあれやこれやと考えるのは止めよう。今できる最大限のことをするまでだ。


「みんな準備はいいッ!?」


聖仁さんが叫ぶ。皆が瓏くんを見上げた。泰紀くんが最後の一言を奏上する。


「行け!」


恵衣くんの掛け声とともに一斉にみんなが駆け出した。