信乃くんが目を見開いた。
「あいつ……まだ自我が残っとる! 完全に変化してしもうたら手に負えん、捕まえるなら今しかない! 頼む力貸してくれ!」
「無茶言うな信乃、瓏を助けるために皆を犠牲にする気か」
立ち上る炎に顔を顰めながら鬼市くんがその肩を掴む。
「ほんなら俺に瓏を見捨てろ言うんか!? 千歳狐かて妖やッ! 力使いすぎたら命に関わるんやぞッ!」
その言葉にハッとする。
私は自分たちが持ちこたえられるかどうかばかり考えていたけれど、それだけじゃなかったんだ。
言霊の力に限界があるように妖力にだって限界がある。活動の源であるそれが無くなれば、どうなるのかは私が一番よく知っている。
タイムリミットは私たちの力がもつかだけじゃなかったんだ。
皆が奥歯をかみ締めて視線を逸らした。信乃くんが崩れ落ちるようにその場に膝をついた。土の上できつく手を握る。
「頼む……ッ、俺が何とかするって、助けるって約束したんや。あいつは"約束"って言うた……俺に助けてくれって言うたんや!」
約束、たしか瓏くんもそう呟いていた。
きっと二人の間で大切な何かが交わされていたんだろう。