「アイツとっ捕まえて叩きのめした方が早くねぇか!?」
「出来たらとうにやっとるわ!」
怒鳴りつけるように叫んだ信乃くんが瓏くんに向かって怪し火を放った。炎の塊は瓏くんが投げた怪し火によって白波のように霧散する。
火の粉が粉雪のように降り注ぐ。
「瓏のやつ強キャラすぎない!?」
「実際に強キャラなんだよ! 無駄口叩いてないで奏上して!」
「でも元凶どうにかしなきゃ埒が明かないよ!」
確かに来光くんの言う通り、怪し火を放つ瓏くんを止めない限りこのままじゃいたちごっこだ。
くそ、と唇を噛んだ信乃くんが泣きそうな顔で瓏くんを見上げる。
薫先生には連絡した。場所は伝えてあるし、競技内容的にも緊急事態に備えて各ポイントに神職さまたちが待機していると聞いている。
もう十分もしないうちにここまで来てくれるはずだ。それくらいなら私達もなんとか持ちこたえられるかもしれない。
「おい瓏ッ! しっかりせんかい!」
信乃くんが叫んだ。苦しげに頭を押えた瓏くんが私たちを睨みつける。「……逃げてッ」と絞り出したような叫び声が辺り一面に響いた。