「離せやこのひょろひょろ優顔モヤシッ!!」
「言ってくれるね!? でもその程度の挑発には乗らないよッ!」
その細い体のどこにそんな力があるのか、聖仁さんは信乃くんを軽々と肩に担いでその場を飛び退いた。
飛び退いた場所に火の玉が降り注ぐ。信乃くんは悪態をつこうと開きかけた口を閉じた。
すかさず恵衣くんと嘉正くんが鎮火祝詞を奏上した。怪し火の火力が徐々に弱まっていく。
「二発目来るぞッ! 全員気を抜くな!」
瑞祥さんの喝に皆が顔を上げて瓏くんを見る。
「まずいな、これじゃ僕らが逃げきるよりも先に火の手が回ってくる!」
「私たちが離れた途端火の海ってこと……!?」
来光くんが苦い顔で頷いた。
「これじゃ僕たちが圧倒的不利な根比べだよ! どうするんですか聖仁さん!?」
「今考えてるッ! とにかく自分の身を守りつつ怪し火を鎮火して!」
あの聖仁さんが声を荒らげた。それだけ切羽詰まった状況ということだ。
ざっくりとした指示に戸惑いつつも燃え盛る怪し火に向かって柏手を打った。
瓏くんは次々と怪し火を放つ。言霊を奏上しないとその火を消せない時点で、私たちはかなりハンデが大きい。みんなで散らばって奏上して、やっと鎮火が追いついている状況だ。
でも何度も言霊の力を使えば体力は消耗する。瓏くんに押されるのも時間の問題だ。