「里の厄介もんと信頼ゼロの頭領、強なって帰ってきて周りを見返したろうや」
瓏が顔を上げた。揺れる瞳で俺を見つめる。
「まぁ、その代わりお前も俺のこと助けろや? これまで通り、足りんもんは補い合っていくんや」
ほれ、と握りこぶしを差し出した。
不思議そうな顔でその拳を見つめる瓏。強引に手を取って同じように拳を作らせた。
「俺はお前がヤバいとき、俺が何とかする。これまで通り、お前に出来んことは俺が代わりにやる。約束や」
「約束……」
「そ。ほんでお前は?」
俺は、そう呟いた瓏が視線を彷徨わせたあと恐る恐る俺を見た。
「俺は……信乃を助ける。信乃にできないこと、俺がやる。信乃のピンチは、俺が助ける」
「決まりやな」
こん、と拳をぶつけ合えば、手の甲にじんわりと熱が広がる。
目が合えば何だか小っ恥ずかしくて鼻をこする。瓏は不思議そうに合わせた拳をじっと見ている。
「……信乃」
「ん?」
瓏が顔を上げて俺を見た。
「ありがとう」
瓏が笑った。満面の笑みだった。
これまで微笑んだり吹き出しているのを何度か見た事はあったけれど、こんなにも嬉しそうに笑った顔は初めて見た。
思わず瓏の頬を叩いた。
「なんで」と俺を責めるように目で訴えてくる。
「堪忍、現実かどうか確かめたくて」
「そっか……なら仕方ない」
「いや許すなよ」