「信頼を失うも得るも自分次第、いっちょ前のこと言うようになったやんけ」
「止めろ、掘り返すなや」
頬が熱くなるのを感じて顔を背ける。
俺も夜空を見上げた。
「でかなったな、お前。そうならざるを得ん環境やったんやろうけど」
親父の声色が優しい。ちょっと気味が悪かった。
「この数年、迷惑かけたな。幼いお前に無理させてしもた。堪忍な」
「……急になんやねん。気色悪」
頭を叩かれた。叩かれた拍子に撫でられた。オヤジの手は昔と変わらずガサガサしていて硬くてでかい。
やめろや!と手をはたいて立ち上がると「まぁ待たんかい」ととめられる。
「お前、俺になんか話あるんやろ。神職らに"本日付け"なんて宣言しよって、神託では詳しい日付は言われとらんはずやぞ」
腹は立つが流石オヤジだ。俺が何かを企んでいることに気付いていたらしい。
もう一度腰を下ろして親父と向き合う。今度は目をそらさない。
「この数年で、俺は知識も経験も何もかもが足りとらんことが嫌という程わかった。宮司になるだけの素養を身に付けてから上に立ちたい。だから俺は、神修の高等部に進学したい」
オヤジは不思議そうな顔をして目を瞬かせた。