里に戻ると案の定緊急会議が開かれていた。

代替わりして完全に表舞台から姿を消していたオヤジが上座に座っている。ほんの少し前までは俺が座っていた席だ。

里に戻る道中で権宮司に連絡を入れておいた。ちゃんとあの引きこもりオヤジを引っ張り出してきてくれたらしい。

オヤジの横に腰を下ろした。一瞬目が合う。苦い顔で睨まれた。知ったこっちゃない。これは神託で御祭神のご意志なのだから。


「あの……なぜ先代がいらっしゃったのでしょうか」


口火を切ったのは禰宜頭だった。

まだ権宮司は誰にも話していないらしい。

神職たちを見回した。


「数時間前に神託があった。よって俺は頭領を一旦退く」


会議室にどよめきが広がる。


「ま、待ってください。神託って……一体どう言った内容の?」

「御祭神さまは次の宮司はお選びになったんですか?」

「いま"一旦"って仰いました?」



慌てふためく神職たちからの矢継ぎ早な質問に息を吐いた。


「信田妻一族現頭領である信田妻狐の妖、阿紫霊狐(あしれいこ)の信乃は気狐(きこ)になるまでの間宮司を退き修行に専念せよ、とのことや」

「そんな神託が……本当なんですか?」

「御祭神を疑うか?」


室内のざわめきはたちまち静まった。