初等部を卒業し順調に中等部三年の学期末の昇階位試験に合格し、無事出仕(しゅっし)の身になった。

相変わらず里での俺への信頼は薄く、瓏も大人たちとは上手くいっていないようだった。

高等部にあがれば専門科目が始まって、今以上に時間が取れなくなる。これまでは週末に帰省して仕事を片付けていたが、それも厳しくなるかもしれない。

神修を卒業しなくても、独学して階位を取ることはできる。こうなったら高校には進学せず、神主修行に本腰をいれるか。


他人に相談しても結局は自分が決めることで、悶々と悩みながら中等部最後の三学期を過ごしていた。

俺とオヤジに二度目の神託が下りたのはそんな時だった。


週の半ば水曜日の二限目、ぼーっと古典の授業を聞き流していたその時に弾けるように立ち上がる。

隣の席の鬼市と教卓に立っていた担任が驚いて振り向く。


「先生すまん、神託。しばらく里に帰る」

「お……おお、そうか。申請だけ出してけよ」


俺の家の事情を知っている担任は最初は少し戸惑っていたものの、すぐに切り替えてそう言う。


「おう、了解。あと進学のことやけど、やっぱり行くわ高等部」


手早く荷物をまとめながら担任に向かってニッと歯を見せた。


「は?」

「ほなよろしゅう」


じゃ、と軽く手を上げると鬼市は少し呆れたように「気を付けろよ」と手を振り返した。