「俺は何もしとらん」 「友達って言ってくれた」 「そんなん、ノリで言うただけや」 「大丈夫って、言ってくれた」 「それもただノリで」 そいつは静かに首を振った。 「そう言ってくれたのは、信乃だけだった」 手のひらに爪が食い込む。唇をすぼめても頬を伝う涙は止まろうとしなかった。 そいつはオロオロと焦る素振りを見せて、敷きっぱなしの掛け布団を俺の顔に押し付ける。 「信乃、大丈夫。大丈夫」 いつかの俺がそうしたみたいに、そいつは微笑み言祝ぎを紡いだ。