「お前ら……なんでこんな所に」

「今日の任務がヤバかったって親父に聞いて……ほんで信乃がまだ家に戻ってないって言うから心配で探しに来たんや!」


瞳をうるませた友人が顔を真っ赤にしてそう叫ぶ。信乃にぃのばがぁぁ、と子供らの合唱が続いた。


「心配て……親に色々言われてんとちゃうんか」

「それはッ……そうやけど! でも信乃は信乃や!頭領でも野狐落ちの家族でも、俺らの友達やろ!」

「そうや! 友達の心配して何が悪いねん! 親の言うことなんて知らんわ黙っとれ!」


友人たちが俺の手を引っ張って立ち上がらせた。俺の手を掴むその手のひらの力強さに腹の底が熱くなる。


「ごめんな、大変な時に素っ気なくしてもうて」

「俺は最初からこうするつもりやったんやで!」

「嘘付け、一番日和(ひよ)ってたくせに〜」

「信乃にぃ抱っこ!」

「信乃ちゃんおんぶしてぇ」


一気に騒がしくなった己の周りを呆然と見つめる。

ずっと当たり前の景色だと思っていた。なんならその賑やかさを煩わしいとさえ思っていた。そう思えるくらいその日々が自分にとって大切だったからだろう。

バレないように目尻を拭って子供たちを抱き抱える。軽やかな笑い声をもっと良く聞きたくて抱きあげる腕に力を入れた。


「信乃にぃ……」


袴をくいと引っ張られる感覚がして振り返った。里の子供の一人が、俺の袴を掴んでいる。

その場にしゃがみこんで目線を合わせた。