悲しいし悔しいし、腹立たしいし苦しい。

現状に嘆くしかない自分が嫌だ。何も知らない自分が嫌だ。皆の心が離れていくのが嫌だ。決められた運命に流されるだけで何も出来ない自分が、何よりも嫌だった。

かわいた笑みが零れた。


「……ハハッ。こんなんもう、死にた────」


続きの言葉は俺のうめき声で強制的にかき消された。突然腹部へ強烈な圧迫感を感じて「ゔっ」と蛙が潰れたような声を上げる。

目を白黒させながら何とか首を起こすと、目の前に真っ赤な顔が現れた。両目からは大粒の涙をボタボタとこぼし、俺の襟元に容赦なく鼻水を垂らす。


「信乃にぃ死なんといてーーッ!」


首元に抱きついたそいつは俺の鼓膜を破る勢いでそう叫ぶ。若干意識が遠のきかけた。


「おまっ、耳元で叫ぶな殺す気かッ!」


久しぶりに声に力が入った気がした。

俺の腹に飛び乗ったのは里の子供の一人だった。慌てて体を起こせば四方八方から子供らが飛びついてきて小猿の如く俺にしがみつく。


「し、信乃ッ! お前いま死にそうって言うたんか!?」

「やっぱり怪我してんのか!? なんで巫女頭に診せんとこんなとこ来てんねん!」

「バカヤロー!! お前が死んだら俺らもあと追いかけるからなッ!!」


後から走ってきたのは友人たちだった。子供らの上から俺に飛びつきぎゅうぎゅうと抱きしめる。

ぐはッと二度目の呻きを上げたことで、ようやく自分たちが俺を殺しかけていることに気付いたらしい。

慌てて子供ら引き剥がした。