その数日後、大規模な祓除の任務が本庁から降りてきた。編成を組んでの大掛かりな修祓になる。
まだ現場に出たことのない俺は、権宮司の言葉通りに人員を整えて初めての実戦に向かった。
結果は言わずもがな、酷い有様だった。
本庁から降りてきた情報と現場の状況が食い違っていたのも要因ではあるだろうけど、なによりも自分の不甲斐なさが、現場に出向いた神職の半分が重軽傷を負うという結果を招いたのだと思う。
自分は後ろで守られるばかりだった。オヤジみたいに最前線でみなを守るのが頭領の役目なはずなのに、後ろで何も出来ず棒立ちしているだけだった。
例の千歳狐も連れていった。あいつは前線でかなりの活躍を収めた。里の厄介者が前線で活躍し、里の頭領が厄介者になるなんておんだお笑い草だ。
帰り道、怪我を押えながら歩く神職達の心はもう俺にはないのだと感じた。その背中は間違いなく俺を拒んでいた。
やっぱり俺は頭領にはなれないのだ。
血の繋がった姉を信じられず、親を恨み、同胞に手をあげようとした俺には宮司なんて務まらないのだ。
疲れた体を引きずるように里へ帰ってきた。家には戻らず裏山の小川へ向かった。
本の数ヶ月前までは、ここで友人や里の子供らと楽しく川遊びしていた日々がまるで遠い昔のようだ。
サワガニがちょろちょろと視界の隅を横切った。取っても喜ぶ奴はもういない。小石を投げれば傍に落ちて、驚いたように石の影に逃げていった。
「……これからどうしよかな」
情けない声はせせらぎに消える。
力なく寝転んで目の上に腕を乗せると、どうしようもなく涙が溢れた。