「解任は俺が自ら申し出た。我が子が野狐になって、親が責任を取らん訳にもいかん」
俺が反論する余地もないくらい頑なな声だった。
神職は身内が野狐落ちすれば解任、昔からそう決まっている。過去に宮司の身内に野狐が出た例は聞いたことがないが、オヤジがそう申し出たのなら例外はないのだろう。
「でも……ほな次の宮司はどないすんねん。次期頭領の俺は、伊也ねぇの弟やぞ」
「現時点で新たに神託を授かった者はいません。御祭神がまだ信乃さんを次の宮司として認めている以上、明日からは信乃さんが宮司で信田妻の頭領です」
権宮司は淡々とそう言う。これも決定事項らしい。異論は出なかったもののひそめられた話し声をいくつか耳が拾った。