そもそもお袋は神職ではないから、こういう会議の場に出ることはなかいはずだ。

だったらなぜお袋がここに?


「信乃さん、座ってください」


険しい顔をした権宮司(ごんぐうじ)にそう促され、お袋を支えたまま末席に座る。

オヤジに視線を送った。思い詰めた顔で畳に視線を落としている。他の神職たちも楽しげな表情とは言えない。


「結論から申し上げます。伊也が野狐(やこ)に落ちました」


どよめきはなかった。他の神職たちはもう既に知っていたらしい。

それもそうか、でなければ学期の半ばに自分がわざわざ呼び出されたりしないだろう。

やけに冷静に分析している自分がいる。いつかこうなるかもしれないとどこかで思っていたからだろうか。


「宮司の解任に私以下全ての神職が同意しました」

「……は?」


予想もしなかった言葉に目を向いた。


「つまり、伊也ねぇの不始末の責任をオヤジに取らせる言う訳か?」


誰も反応しない。気まずそうに目を逸らす。答えなくてもその反応で肯定しているのが分かる。

お袋が「私のせいで、ごめんなさい」と俺の肩に頭を寄せて呟く。その瞬間、カッと頭に血が上った。


「お前らッ、これまでオヤジとお袋に散々……!」

「やめんか信乃」


芯の通ったオヤジの声に、くっと言葉を詰まらせる。

オヤジはひとつ息を吐いて顔を上げた。