不思議に思いながら実家へ顔を出す。こちらもやけに静かで、声が聞こえた台所へ顔を出すと手伝いのばあさんに荷物をひったくられ急いで社務所へ行くように言われた。

何が何だか分からず社務所へ目指す。

社が開くのは暮六つ(しちじ)頃だから、日勤の神職以外はまだ来ていないはずなのに。

ばあさんに言われた通り社務所へ向かうと入口にはたくさんの雪駄がずらりと並んでいる。数からして日勤の神職だけじゃない。ほぼ全員かそれ以上は集まっているようだ。

一体どういうことや?

自分も靴を脱いで雪駄を避けながら社務所の中へ入る。

声は二階の大会議室から聞こえる。激しく言い争う声だ。


会議室の入口には若い巫女助勤の女が怖ばだた表情で座っている。俺を見つけるなりハッと立ち上がった。


「お帰りなさいませ信乃さん! さぁ早く中へ!」

「一体何があったんや? 神職総出で会議なんて、祭りの前でもあるまいし」

「詳しくは中で……! 皆さま、信乃さんがお帰りになりました!」


突き飛ばされる勢いで会議室の中へ押し込まれた。

入ると同時に四方八方から色んな感情が籠った視線を感じだ。少なくともその中に好意は感じ取れない。


「信乃……ッ!」


お袋に名前を呼ばれた。上座でオヤジの横に座っていたお袋がよろよろと立ち上がり俺の元へ進んでくると倒れるように抱きついてきた。

普段なら「なんやねん」とかわすところだが、ただ事ではない様子に抱きとめる。