「信乃に、ください……?」

「いや俺は名前あるし」

「信乃へ、ください」

「何言うとんねん」


何かを必死に伝えようと身を乗り出した。


「信乃が、ください」


だから俺にはもう名前あるからいらんのや、そう答えようとしてひとつの可能性に気付き「あ」と声を漏らした。

もしかしてこいつ。


「俺に、名前を付けろと?」


言葉の意味は分かっていないようだがニュアンスで理解したらしい。小さく頷いて俺を見た。


「お前なぁ……名付けの意味分かってんのか? 名前いうんは短い呪や。相手の一生を縛るものなんやぞ」


困ったように眉を寄せて俺を見る。思わず天を仰いだ。