「千歳狐っちゅうんは、力が強すぎるから空狐になるまでは親元で制御の仕方を勉強するんや。修行期間が明けるまでは人里どころか妖の里にも降りてこん」
「うっげぇマジか! 空狐までオヤジらと同居とか考えただけで吐きそうや。おぇ〜」
出来たてのたんこぶを上から殴られた。
キャンッと悲鳴をあげ縮こまった。痛みのせいで仕舞ったはずの耳と尾っぽが飛び出した。
「あの子は修行期間が明ける前に拐われてしもたから、ただ暴走することしかできやん。野狐たちの手にはおえん存在やったんやろ」
なるほどな、だから地下牢に放り込んどいたんか。
「今あいつはどないしてんの」
「力を強制的に弱める呪印を体に刻んである。連れて帰ってくる時も入れたはずなんやけど、さすが千歳狐やな。それくらいじゃ抑えきれんかったみたいや」
「オヤジがちゃんと施さんせいで俺が犠牲になったんやけど!」
「バカタレ、事情説明しよ思てたのにお前が隠れてたからやろ」
それは、と目を逸らした。
ため息をこぼしたオヤジはそれ以上の説教は止めた。十分すぎるバチが当たったので仕事をサボったことは一旦許してもらえたらしい。
「とにかく暫くウチで預かることになった。面倒見たれよ」
「嫌やし、そんな危険な奴!」
べぇっと舌を出せばオヤジは俺の頭を叩くように撫でた。
たんこぶが若干痛かった。