妖狐の道を踏み外した悪事を働く狐を、俺たちは野狐(やこ)と呼んでいる。人の世界と同じで、盗みを働いたもの殺しをしたものなんかがそう呼ばれる。

どの一族も昔から一定数は野狐がいて度々一族内でも問題視されてきたらしいが、先の戦────空亡戦で野狐達が空亡側に付いたことで一族だけの問題ではなくなったのだとか。

それから野狐の取り締まりは一族の垣根を越えて妖狐族全体で取り締まるようになった。


今回の遠征は祓除ではなく黒狐一族から抜け出した野狐(やこ)の討伐だったらしい。

黒狐一族の野狐の噂はそこまで聞いたこともないし、オヤジ達もそれほど警戒せず出発し案の定大した戦闘にもなず野狐は全員確保したのだとか。


問題が起きたのはその後だった。

野狐に捕まった他の種族の妖がいないか確認するため、根城を徹底的に捜索していた時に封じの結界が施された地下通路が見つかった。

結界は何重にもかけられていて、それを見つけた第一発見者の若い妖狐は「奥に宝が保管されている」と思ったらしい。

確かにこれまでの野狐討伐で、同じように地下に奪った宝が隠されていることはよくあったのだとか。


若い妖狐か一つ目の結界を解いた次の瞬間、地下通路は青い炎に包まれた。