「────巫寿、巫寿! もういい、よくやった!」


強く肩を引かれる感覚に我に返った。ハッと振り返ると禄輪さんが目を弓なりにして私を見ている。

あれ……私。そうだ幸魂、幸魂修行の最中だった。それで急に体が寒くなって暑くなって、訳が分からないまま必死に反復して。

ヒュウと冷たい風が吹き込んで来た。風が冷たく湿っている。朝の風だ。始めた時は日が沈みかけている頃だった。もうそんなに時間が経ったのか。

ふと首を折って自分を見下ろした。立っている。座っていたはずなのに立っている。


神遊(かみあそ)びだ。言祝ぎが全て元に戻った証拠だ。よく頑張ったな」


肩を抱かれたその瞬間足の力が抜けた。

おっと、とすかさず抱きとめてくれた禄輪さんは軽々と私を抱える。


「一旦寝なさい。目が覚めたら騰蛇を呼び戻そう。本当によく頑張ったな」


分厚い手のひらで頭を撫でられ、その温もりに誘われるように眠りに落ちた。