「ややこしいな。つまりオヤジ達は明後日に帰ってくるんやな? ……ん? いやちゃうぞ。明後日には帰るって一昨日の日付────今日やん!」


その時、里の正門から賑やかな人の声がして「ゲッ」と顔を顰めた。もう帰ってきたらしい。

オヤジが出かけ間際に俺に言いつけた仕事にはまだ何一つ手をつけていない。このままじゃ間違いなく怒られるし、最悪夏休み中は遊べなくなる。

だったらやることは一つだ。


「堪忍、俺やっぱり川はパス!」


友人たちに手を合わせてその場でぴょんと軽く飛び跳ねる。ぽんと音を立てて床に降り立った時には両手は短い前足に変わった。四本足で土を蹴る。

大規模な遠征があった日の夜は必ず宴会が開かれる。オヤジと顔を合わせるなら、酔っ払っているその辺がいい。

それまでどこかに隠れていよう。


「信乃! ビッグニュースはそれとちゃう! 話まだ終わってないって!」


友人がそう叫ぶ声が聞こえたが、正門からオヤジが俺を呼ぶ声が聞こえたので逃げ隠れることを優先した。