「僕ら関係なくないですか!?」
「約束守ってないのは信乃だけだろ!」
「信乃が行ってなかったら君らが行ってただろ!」
拗ねたように反論した二人だったが直ぐに「うっ」と言葉に詰まらせた。どうやら図星らしい。
聖仁さんに続いて走った。
やがて白い後ろ姿がはっきりと見えた。何にも染まらない白髪が風邪でサラリと揺れる。白髪の隙間から警戒するようにピンと経つ獣耳。揺れる尾っぽは九つの怪し火を灯す。
その真っ白な背中を赤い横線が一文字に走っているのに気がつく。
白衣が破れて同じように赤が滲んでいる。赤は血だ。瓏くんは背中に傷を負っている。
その傷が瓏くんの呪印を解いたんだ。
「おいこのド阿呆狐ッ! お前は一体何をやっとんねん……瓏!」
見えた未来と今が重なる。
信乃くんが叫ぶ声に、僅かに肩が震えた。振り返った瓏くんは私たちを見下ろす。黄金色の瞳がゆったりと私たちを見回し、その圧倒的な気配に身動きができなかった。
「瓏、聞こえるか!? 一旦落ち着け! このままじゃ森が燃える! 友達を危険な目に合わせてええんか!?」
能面のように感情を宿さない表情だ。
「瓏ッ、しっかりせぇ! 力に負けるな、自分がコントロールするんや!」
黄金の瞳が僅かに揺らいだのが見えた。
明らかにその姿は私が見た未来と違う。だってあの未来では、瓏くんは信乃くんの言葉に少しも反応しなかった。