息をするのもやっとな圧迫感と前肢の毛穴がぎゅっと引き締まるような威圧感に言葉が出ない。私はこの感覚を覚えている。
あまりにも突然のことに皆は目を白黒させた。
「あかんあかんあかん……ッ! 瓏が変化してもうた!!」
信乃くんのそんな叫びにハッと息を飲む。
まさかそんな、間に合わなかった。
「皆立つんだッ!」
聖仁さんにそう言われ皆は震える膝をついて立ち上がる。
「気合いで走って!」
「こんな時に根性論かよ……ッ」
「こんな時だからだよ!」
ヨロヨロと何とか歩き始めたその時、山頂から吹いた風に僅かに煙の臭いを感じた。
勢いよく振り返るけれど、怪し火は燃え広がっていない。けれど間違いなくどこかで火がついた匂いだ。
「何だ、どうした。何かあるならさっさと言え」
振り向いて立ち止まる私に恵衣くんが駆け寄る。苦しげに膝に手をついたて私を見上げた。
「火が……火がついてる! 今かすかにだけど煙の匂いがしたの! このままだと山に燃え広がる!」
一瞬何かを考え込む素振りを見せた恵衣くんは、既に歩き出している聖仁さんの背中に叫んだ。
「聖仁さんッ、瓏が火を付けました! 今ならまだ間に合う!」
戸惑うように視線を泳がせた聖仁さんの手を、瑞祥さんが掴んだ。
「迷うくらいなら行くぞ、聖仁!」
二年ズも来いッ!
それを合図に皆は山頂へ向かって走り出した。