「だ、大丈夫か? てか何で皆一緒なんだ?」
「何でって、緊急事態だからに決まってんだろ! てかお前スマホどーしたんだよ!」
「スマホ? あ、電源切れてるわ」
泰紀くんが無言で鉄拳を落とす。いでぇ!と悲鳴をあげた慶賀くん。
可哀想だと思うけれど今回ばかりは仕方がない。それほど皆心配していたということだ。
「慶賀ッ! 瓏はどうしたんや!?」
信乃くんが慌てて詰め寄ると、気まずそうな顔で目を泳がせる。
「そ、それがさぁ……俺が地縛霊祓ってる間にアイツ勝手に先に行っちまって、今探してる所なんだけどぜんぜん見つからなくて……ていうかそもそもここはどこ〜的な?」
「お前が迷子なって瓏の事置き去りにしとんのやろうがこのアホンダラッ! 始まる前にあいつのこと頼むって言うたやろッ!」
声を荒らげた信乃くん。
慶賀くんは思い詰めた表情で俯く。
「慶賀、瓏がいないって気がついたのはどれくらい前?」
「……十五分前、とかだと思う」
「だったらまだそこまで遠くには行ってないね。薫先生に現在地を連絡しよう。信乃には悪いけどここで一旦捜索は打ち切り、下山するよ」
事情を知らない慶賀くんが「下山?」と険しい表情を浮かべる。
泰紀くんがため息を吐きながら答えた。
「巫寿が先見の明で、瓏が変化して暴走するのを見たんだよ。だから競技は中止になって、学生は全員下山するように言われてる」
「は!? 何だよそれ!?」
慶賀くんが困惑した表情で私を見る。重々しくひとつ頷いた。