木々の間を駆け抜ける。
みんなは必死に辺りを見回した。
「この辺じゃねぇか?」
「うん、確かに見覚えがある」
クスノキを見たという二人が「この先だ」と指をさす。
信乃くんがスンと鼻を鳴らして目を見開いた。
「少しやけど、瓏の匂いがする……ッ!」
飛び出そうと前に出た信乃くんの手をすかさず先輩二人が掴んだ。
「約束、忘れてないよね」
「……ッ、わぁーとる!」
「偉いぞ信乃! それで、瓏は本当にこの先にいるんだな?」
瑞祥さんの言葉に深く頷いた。
「間違いない、古いクスノキの匂いと瓏の匂いや」
「よし、ならまず先生達に連絡を────」
瑞祥さんの言葉を遮るように、ガサッと音を立てて向かいの茂みが揺れた。
皆が両足に急ブレーキをかけた。止まるのと息を飲むのはほぼ同時だった。
ガサガザッ────茂みが揺れる。もう目の前だ。後ろに飛び退くにも何処かに隠れるにも時間がない。
緊張と走った疲れで心臓がばくんと音を立てたその時。
「……え、は? な、なんだよお前ら。何でこんなとこいんだよ?」
茂みから現れた見慣れた顔にみんなはその場に崩れ落ちた。
「お前かよ慶賀〜〜〜ッ……」
泰紀くんが天を仰いでそう叫ぶ。
座り込む私たちにギョッと目を見開いた。