「だってあのまま駄目駄目つってたら、こいつら飛び出して行ってたぞ!」
「それはッ……そうだけど! だからって勝手に決めるな! 瑞祥はいつも考えなしなんだよ!」
「はぁぁ? 誰が考えなしだって!? ちゃんと考えてるから条件付けたんだろ!」
二人のテンションのボルテージがぐわんと上がっていっそう口論は激しくなる。みんなはどうしたものかとあわあわしながら二人を見ている。
「条件付けたところでこの子達が安全だって保証できる!? 怪我一つさせずに下山させられる!?」
「そのために聖仁がいるんだろ! お前ならそれくらい出来るだろ!?」
な、と言葉に詰まらせた聖仁さん。一瞬どこか嬉しそうな表情をして、直ぐに顔を顰め下唇を噛み締める。
そしてしばらくの沈黙の後、世界記録が出せそうなほどの深い溜息をつくと、瑞祥さんの頭に手刀を落とした。
手刀を落とされたのにも関わらず勝ち誇ったような顔をした瑞祥さんに、聖仁さんはこめかみを押えて振り向く。
「俺と瑞祥よりも前に出ないこと、二人の姿が確認できなければそれ以上は探さず直ぐに下山を再開すること。いい?」
はいっ!と皆の声が揃う。瑞祥さんは「やったな皆!」と振り返って私たちにピースサインを見せた。
「瑞祥さん、あんたホンマええ女やわ! 許嫁がおらんかったら結婚申し込んでたで!」
ははっ、と笑った信乃くんに聖仁さんがにっこりと笑った。
「あんまり調子に乗ってると、尻尾引っこ抜くよ信乃」
「いや怖……冗談やん……」
何はともあれ、今の私たちにできることをするまでだ。