「瓏くんは大きなクスノキの上に立ってたの! 他の木よりも頭一つ飛び抜けて大きな木だった!」


瓏くんを見つけ出した時、確か太い木の枝に立っていた。

来光くんが目を見開く。


「俺、その木見たかも! 嘉正も見たよな!?」

「確かに大きな木を見た記憶はあるけど、山の中だし似たような木は沢山あるだろ。それが巫寿の言う場所なのかも確証がない」

「それはそうだけど、中腹辺りだったからもうすぐ近くを通るはずだぞ!」


信乃くんが勢いよく振り向いた。


「頼む、行かせてくれ!」


ここから近いのなら少しだけ立ち寄ってもそんなに遅れは取らないはずだ。瓏くん達がいないことを確認したら、直ぐにまた降り始めればいい。

少し寄ってみるか、と話し始めたその時。


「駄目だよ皆。薫先生は直ぐに下山するように言ったんだ。このメンバーの中では俺が年長者だ。監督責任もある。従ってもらうよ」


冷静で凛とした芯のある声。先頭を走っていた聖仁さんの声だった。


「なんでだよ聖仁さん! すぐそこなんだぜ!?」

「分かってるよ。俺も登ってくる時にその木は見たからね。だからこそ尚更駄目だ」


なんでや!と頭に血が上った信乃くんが怒鳴る。


「もし巫寿ちゃんの言った場所がそのクスノキの場所だったとして、瓏がそこにいたとして。そしたら誰が瓏を止められる? 未来では皆怪し火に焼かれて全滅しかけたんだよね? その未来を変えるために走ってるのに、わざわざ同じ未来に飛び込むの?」


絶対そんなことはさせない。

力の籠った強い言葉に皆は一瞬口を噤んだ。