ゾッとして唇を噛んだ。

私が見た未来では、瓏くんはもう変化した状態だった。もう少し前の未来を見れていたら、瓏くんの変化を根本から止めることが出来たかもしれないのに。


「おい、ウジウジ考えてる余力があるならもっと足を動かせ」


私の手を引いて走る恵衣くんが眉間に皺を寄せてちらりとこちらを見た。


「今になってあれやこれや考えても仕方ないだろ。この瞬間にできることを考えろ」


相変わらずな冷たいぶっきらぼうな物言い。でもその言葉に間違いはなくて、私の無駄なもやもやを吹き飛ばしてくれる。

そうだ。どれだけ私が悔やんで考えても、見たい未来を見れるわけじゃない。だったら今は、この瞬間に私が出来ることを探すべきだ。


今の私に出来ることは、見えた未来を皆に伝えて回避すること。

思い出すんだ。どんな未来だったのか。どれだけ怖くても、それが皆を救うきっかけになるかもしれないのだから。


山中に燃え広がる怪し火に逃げ惑う声。信乃くんが瓏くんの匂いを辿って、瓏くんがいたのは確か────。


「クスノキ……っ!」


私が声を上げたことでみんなが一斉に振り返った。