禄輪さんの言う通り、幸魂修行は本当に誰でも出来るらしい。
姿勢を正し息を整え、印と呼ばれる手指だけで形を作る。そして一行ほどの短い祝詞を唱えれば終了だ。
二回禄輪さんと繰り返し、三回目からは私一人で反復を続ける。
思いの外簡単だし、体の中で起きることを説明されてビクビクしていたけれど今のところ体に変化はない。
おそらく禄輪さんが大変だと言ったのは、この単純動作を続けて反復することが大変だと言ったのだろう。
これなら何とか私でも続けていけそうだ────なんて考えは数分後に呆気なく打ち砕かれた。
初めは急激な寒気だった。
重い風邪をひいた時のようにガタガタと全身が震えて、とにかく寒くて上手くてが合わさらない。
振り返って禄輪さんに尋ねようとしたけれど、私より先に「そのまま続けなさい」と言われまた同じ動作を繰り返す。
五回ほど反復して今度は寒気が熱に変わった。これも高熱を出した時みたいに体の内側が燃えるように熱い。
「続けなさい」
やはり私が考えるよりも先に禄輪さんがそう言った。
歯を食いしばって反復する。