「クソッ何で出ねぇんだよ慶賀の奴!」

「ちょっと泰紀うるさい! いま薫先生の指示聞いてんの!!」

「お前こそうるせぇッ!」


電話を耳に押し当てて喧嘩し合う二人に渋い顔でゲンコツを落とした嘉正くん。

二人は肩を竦めながらも黙って電話に集中する。


「────はい、慶賀と瓏以外のクラスメイトとは連絡が取れて一箇所に集まってます。聖仁さんと瑞祥さんもいます。……はい、はい。分かりました、すぐに下山します」


通話を終えた来光くんが振り返って私たちを見廻す。


「薫先生が上に掛け合って競技は一時中止になった。慶賀と瓏は審査員の先生たちが迎えに行くらしい。僕たちは纏まって下山するようにって」


みんなは神妙な顔でひとつ頷く。

泰紀くんが「ああもうっ!」と苛立った声を上げてスマホを耳から話した。


「やっぱりアイツ電話に出ねぇ!」

「もしかしたら神修にスマホ置いてきたのかもしれないね」

「なんでこういう時に限ってアイツは!」


頭をぐしゃぐしゃとかいて険しい顔で息を吐く。

とにかく下山しよう、聖仁さんの一声でみんなは山を下り始めた。