妖や幽霊からの攻撃を受けた際にできる怪我は霊障(れいしょう)と呼ばれ、普通の治療では治すことができない。傷口は呪いを受けている状態と同じだから、霊障を治すにはまず清め祓いをしてその後平癒祝詞を奏上する。

でも病気の治療と同じですぐに治る訳ではなく、繰り返しお祓い受けることで完治する。複数回に渡りお祓いが必要なのは、霊障を祓うには強い言祝ぎが必要だからだ。

つまりこの場で私がするべき事は祝詞に加勢することじゃない、皆の言祝ぎを底上げすることだ。

荒い息をと整えて姿勢を正す。両手を天高く差し出す。鼓舞の明、一番最初の型だ。

心の中で強く光をイメージした。私の鼓舞の明は光、皆の足元を照らし、傷を癒し、進むべき道を示すような強い光だ。

みんなの言霊が光の粒となって二人の体を覆い隠す。粒が火傷跡に触れると紫暗の靄がしゅわりと噴き出て宙に霧散した。霊障が祓えている証拠だ。

恵衣くんが一瞬顔を上げて目があうとわずかに頷いた。

おそらく鼓舞の明が皆助けになっているんだろう。しっかりと見つめ返して私も深く頷く。

このまま祝詞が終わるまで舞い続ければ、少なくとも今よりかは二人の火傷も良くなるはずだ。

舞の型が全て終わった。

よし、もう一度頭から。

そう思って両手を天に差し出したその時、目の前の景色が余す事なく青に染まった。