ハッと顔を上げると誰かを探すようなそぶりで辺りを見渡す。


「来光!? どこ!? 書宿の明で平癒のお札を書いてくれ! 来光ならできるだろ!?」


意識のない瑞祥さんを抱きかかえてそう叫ぶ。


「駄目だ聖仁さん、来光も逃げ遅れた!」


木陰から来光くんを担いだ泰紀くんが飛び出してきた。顔を真っ赤にして歯を食いしばる来光くんの目尻には大粒の涙が溢れる。白衣の右袖が焼け焦げて無くなっている。そして右頬から首、肩、そして右手の指先までが赤く爛れている。酷い火傷だった。


「この状態じゃ書宿の明は使えねぇよ!」

「そんな……頼む、頼むよ! 瑞祥が酷い火傷で意識がないんだ! 今すぐ治療しないと命に関わるんだよ……!」


泰紀くんは悲痛な面持ちで顔を顰める。


「せ、聖仁さん、すみません。書けません、利き手が燃えました……ッ」


絶え絶えにそういった来光くんに聖仁さんは悔しそうに唇を噛んだ。

他のみんなが木陰から出てきた。来光くんと瑞祥さん以外のみんなはぎりぎり炎から逃れることができたらしい。


「おいお前ら! 祓詞だ、次に平癒祝詞ッ!」


恵衣くんがそう叫び瑞祥さんの傍に膝をついた。

必死に瑞祥さんの頬を叩く聖仁さんに「あんたは落ち着け! しっかりしろ!」と怒鳴りつける。皆の柏手が揃った。

一足遅れた私も慌てて手を合わそうとして止める。