両手を握ったり開いたりしてみる。思い通りに体が動いた。

意識と感覚が紐づいた証拠だ。

今までは意識があるだけで前しか見ることが出来なかったけれど、首が自由に動くことで周りの景色も確認できる。


首をめぐらせて息を飲んだ。

青い炎だ。周囲の木々が青い炎に包まれて燃え上がっている。ただの炎ではないことはひと目見てわかった。

これは火を操る妖が出す残穢、怪し火だ。怪し火がここら一帯を包み込むように燃やしている。


「瓏のやつ所構わず燃やしとる! 完全に自我なくなっとるぞこれッ」


信乃くんがそう叫んだことでこの火は瓏くんが出したものなんだと分かった。

すぐに頭の中で事実を整理した。みんなの話からすると、瓏くんは何らかの理由で呪印が解けてしまい千歳狐の本当の姿に変化してしまった。変化してしまった瓏くんは自我がなく、怪し火をあちこちに放ちながらこの山の中を駆け回っている。そしてそれに気が付いた私たちは瓏くんを止めるために走っている。

恐らくそんなところだろう。


先頭を走っていた信乃くんが急に立ち止まった。咄嗟に踏ん張るも体がふわりと前乗り出したところを鬼市くんが腕を差し出し止めてくれる。


ゴオッと炎が立ち上る音がしてほんの一メートル先で火柱があがった。