急に視界が切り替わる経験はこれで何度目だろうか。

間違いなく恵衣くんと鬼市くんの顔を交互に見ていたはずなのに、気が付けば私は全速力で森の奥を走っていた。


「どういう事や慶賀ッ! お前瓏と一緒におったんとちゃうんか!」


隣を走っていた信乃くんが怖い顔でそう叫ぶ。今にも泣き出しそうな顔をした慶賀くんが答える。


「俺が地縛霊で手こずってて、瓏には先に進んでもらったんだよッ! 合流した頃にはもう変化(へんげ)してて……!」

「クソッタレ!」


誰かに向かって発した悪態ではないのだろうけど、皆は首を絞められたような苦しそうな顔で俯いた。


「落ち着け信乃。今は瓏の体の呪印を戻すのが先だ」

「んなん、分かっとるわッ!」


信乃くんを先頭に皆が走る。私も走る。走る、と言うよりも走っている映像を見ているような感覚だった。

自分の体が自由に動かない感覚に背中から焦りがじわりと広がるけれど、全神経でそれを抑えつける。

深呼吸はできないけれど頭の中で深く息を吐くイメージを思い浮かべた。そして"右手で上げろ"と自分の体に命令してみるも、握った拳は走る足に合わせて前後に動くだけだった。


────間違いない。これは先見の明が見せる、未来の映像だ。