「ここら一帯はほぼ修祓したから、競技が終わるまでサボってようと思ってさ」

「だからこの辺は静かだったんですね」

「悪いな巫寿!」


ガシガシと頭を撫でられて肩を竦めた。

途中までは残穢や呪いを祓いながら登ってきたけれど、少し前から急になんの気配も感じなくなったのはそう言う事だったのか。


「頂上目指してチャレンジするのはいいけど、自分の力量を過信しないようにね。俺らでもこの先は手こずるから」

「やめといた方がいいぞ〜。私は去年ヤケクソになって山火事起こしかけた」


それだったのか、と心の中でつっこむ。


「俺は行きます。怖いならお前らは来なくていい」


ちらりと私たちをみた恵衣くんはフンと鼻を鳴らす。


「おい。個人競技だとしても、俺たちはチームプレイを選んだんだろ。だったら全員の意見を聞くべきじゃないのか」

「だから怖いなら来なくていいと言っただろ」

「それは意見を聞いてるんじゃなくて押し付けてるんだ」


また始まった、と額を抑える。

淡々と事実を述べる鬼市くんにイライラを募らせる恵衣くん。ゴングを鳴らす金槌が振り上げられたのに気がつき「もー!」と二人を引き離した。


「今は言い争ってる場合じゃ────」