「ク、クラスメイトとはいえ女なんだぞ! そう簡単にだッ、だき、抱き寄せるな!」

「はぁ……さっきから何なの。女の子守るのにも恵衣の許可がいるわけ」

「そうじゃないだろ、話をすりかえるな!」

「じゃあ何だよ。抱き締めれば良かったのか?」


本日で何度目かのゴングの鳴る音に、熱くなった頬も動悸も一瞬で落ち着き「ストップストップ!」と割って入る。

競技が始まる前も始まってからもずっとこの調子で、何かある度に二人は口論になる。

二人ともお互いの何がそんなに気に入らないんだろう。


「今は競技に集中して!」


ぎゅっと眉根を寄せて二人に厳しい視線を向けると、分かりやすくぷいっと顔を背ける。

いつも揉め事が始まる度に嘉正くんが割って入ってくれるけれど、嘉正くんの苦労が今やっと分かった。

各々反対方向へ歩き出した二人の背中に、額を押えて深く息を吐いた。



模擬修祓が始まってもう三十分近くは経っただろう。競技は一時間だから、もう半分は切っているはずだ。

山の麓に降ろされた私達は修祓を進めながら少しずつ山を登って来た。