「────恵衣くん! そっちに蛇神の残穢行ったよ!」

「言われなくても分かってる!」


私が声をかけるよりも先に動き出していた恵衣くんは一息で祝詞を奏上する。

シュワッと鉄板の水滴が蒸発するように光の粒を発して消えた残穢にほっと息を吐いて額の汗を拭う。その時。


「巫寿、危ない」


耳元でそんな声が聞こえたかと思うとお腹に腕が回ってグッと後ろに引き寄せられた。後頭部に硬いものがトンと当たった次の瞬間、さっきまで私が立っていた場所を凄まじい勢いで怪し火が通った。

プスプスと黒い煙をあげる落ち葉に目を見開いた。うるさい心臓を抑えながらハッと顔を上げる。


「あ、ありがとう鬼市くん……!」

「ん。怪我ない?」

「うん、間一髪で助かった」


鬼市くんが腕を解く。後頭部に当たっていたのは鬼市くんの胸板だったらしい。

今思えばとんでもない体勢だったことに気がつき徐々に頬が熱くなった。


「お、お、お前! 何やってるんだよ!」


一帯の清め祓いを終わらせた恵衣くんが鬼の形相で駆け寄ってくる。


「何って。巫寿助けるために抱き寄せた」


目を剥いた恵衣が「だッ……」と変なところで言葉を詰まらせて絶句する。同じく私も固まった。

ま……間違いではないけどあまりにも表現が直接的すぎる。