比喩表現ではあるのだろうけれど、私の体の中でぐしゃっと潰してくるくる丸める事が起きるの……?

想像しただけで全身が粟立つ。

私の青ざめた顔に禄輪さんは息を吐いた。


「呪を言祝ぎに転じるのはそう容易くない。だから神職たちは日々、言祝ぎを口にし身の回りを整え日に当たり、己の言祝ぎが減らないように心掛けるんだ」

「今からそれに気を付けて生活したら、何とかなりませんか……?」

「もちろんある程度は回復するが、巫寿は生まれ持った言祝ぎが多い分すっかり元通りになるには10年かかると思うぞ」


10年、途方もない時間に目眩がする。

禄輪さんは眉を寄せた。


「ここまで無理やり連れてきたのは私だが、やるかどうかを決めるのは巫寿だ。どうする?」


怖い、出来るならやりたくない。

でもこれが自分にとっては必要なことだと言うのは分かる。そうじゃなきゃ、禄輪さんが慌てて私をかむくらの社へ連れてきたりしないはずだ。

何よりも呪が言祝ぎよりも勝っている状態がどれほど危険なのかを知っている。口に出した何気ない言葉が周りの人に危害を加えることだってある。

そんなのは絶対に嫌だ。


顔を上げた。

私を試すように見ている禄輪さんの目を真っ直ぐに見つめ返す。

ふ、と微笑んだ禄輪さんはそれ以上何も言わず、ひとつ頷くと私の隣に座り直した。


「やり方を教えるから私に続いてやってみなさい。あとはひたすら反復だ。時が来るまで絶対に手をと 止めず続けること。いいな?」

「はい……!」